no name
「2月14日が、地球では何の日か知っているか?」
「・・・Saint Valentine’s Day、でしょうか」
二人きりの室内。
突如、船長から問われ、瞬間的に副長は答えた。その答えに、酷く楽しそうにカークはこくこくと頷いた。数々の女性を魅了してやまない笑顔を浮かべている。
---------- ああ。この笑顔は自分には良くないものだ。
そう直感してしまったスポックの眉間に皺が寄る。
「・・・そんな露骨に嫌そうな顔するなよ」
「--------いえ、ジム。只、今度は、貴方がどんな素晴らしい思い付きをなさったのかと思いまして」
そう。
二人きりの時、カークがこんなに楽しそうに微笑んでるのは何時だって『何か』を思い付いた時なのだから。
「スールーの国じゃあ、バレンタインは、親しい人物にチョコレートを送るっていう風習があるんだそうだ。・・・・・知ってたか?」
それで、コレ、貰ったんだ、と、カークは先程から片手に持っていたものを見せた。それは通常のチョコレイトのように固形ではなく、どろどろとした液体状で、ボトルに入っていた。・・・・・チョコレイトというよりまるで・・・ローションのようで。
聖バレンチノが処刑された日に菓子を送るという習慣は初耳だったのだが、それよりも、スポックにはカークが何を言い出すのかという方が重要で。粗方彼が何を言いたいのか見当がついてしまったが為に、スポックは、また眉間に皺を寄せたのだった。
「--------・・・で、コレ見てたらチョコ塗れになったスポックは美味しそうだなァ、と思って・・・・・」
---------- ああ やはり
詰る所、今夜はそういうプレイがしたいと、カークが言ってるのは、そういう事で。
「ヒューマノイドを『美味しい』と表現するのは非論理的」と返す気力も無くなったスポックの顔色を伺うように、カークが見つめている。(尤も、スポックが顔色を変えるという事は殆ど無いに等しい事なのだが。)
子供のように不安げに自分を見つめる目。
---------- この男は卑怯だ
「・・・・・私が・・・・・貴方に『お願い』されて断れる筈が無いでしょう?」
そうスポックがため息交じりに奏でた途端、カークは目を輝かせ、柔らかい微笑を浮かべた。
「・・・・・・・どうぞ・・・・・貴方のお好きなように」
吐息が掛かる距離でそう囁いたスポックは、すっと目を伏せた。
ゆっくりと、二人の唇が重なる。
甘く長い夜は、今、幕を開けた。
良きも悪きも・・・恐らく互いの全てを熟知していて、何年も傍にいても
この、誰よりも、近くに居る他人を愛しいと想える
其の非論理的な感情に、名前等無い。
□ あとがき □
かなり遅すぎな上に短いですがバレンタイン記念に。題名の時点で管理人の頭の悪さが分かりますね(笑)
例えほんのりとでも、スポック中心になんて私には3世紀程早過ぎた、と物凄く後悔してます。まさかこんなに難しいとは思わなかった・・・!!
これ普段なら『甘い夜』しか書かない私の大チャレンジ(笑)
肉体的にはカーク×スポックでも、精神的な所ではスポック×カークという雰囲気が好きです。少しでも伝わっています様に。
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