「……甘い」
「…そりゃさっきまで団子喰ってたからな」
毒を食らわば貴方まで
美味いか。
長次にそう聞かれたから、文次郎はただ事実を答えた。
あくまで完結に。たった一言。
それなりに。
すると、いきなり長次に押し倒され、口付けられ、歯茎まで嘗め回されたのだった。
「甘ぇの嫌いじゃなかったっけ、お前」
「…あぁ。…………だが、」
口の中の甘さを全部長次に持っていかれてしまった。
この男の考えることは訳がわからん。
ほとんどはじめから諦めてしまっている文次郎は、この程度で怒っても無駄だと思い、なにも咎めるようなことは言わずに次の言葉を待った。
…そう。無駄だと思ったのだが。
「お前の口からなら、構わん」
「………っ…てめぇ…!」
こんなことを何故こうも恥ずかしげもなく言えるのだろう。
そして文次郎の口から甘さを搾取する理由は何処に?
やっぱり文次郎には全く分からなかった。
顔がすこし赤くなっているのが自分でも分かる。
「この間から、不意打ち、ばっかじゃねぇかよ……!」
「……不意、打ち……?」
はて、不意打ちとは一体何のことか。
全く身に覚えが無い長次は、ただ首を傾げるばかりだ。
あーもう重いんだよ退きやがれ畜生!
文次郎が苦し紛れに(照れ隠しとも言う)そう叫ぶと、ひどく真顔の長次が言う。
「…無理だ」
「あー?」
文次郎は盛大に眉を顰めた。
さも不機嫌だといわんばかりだ。
今の文次郎を見たら、一年生などは泣き出してしまいそうだ。
「なぜなら、」
早く言えよ。
元々せっかちな性分の文次郎。段々と眉間の皺が深くなる。
「…もう俺はその気になっているからだ」
「はぁぁぁあぁぁぁ!?」
団子ごときで盛ってんじゃねぇぞこの呆け野郎!
叫ぼうとした言葉は長次の唇に遮られた。
押し返そうとしたが、無駄だった。
徐々に圧し掛かって来る長次の体重に、文次郎は諦めて目を閉じる。
人間諦めが肝心だと、先人たちも言い伝えたではないか。
(それにしても)
自分の口内を貪る長次の舌の動きがあんまり激しくて。
まるで喰われてるみたいだ。
そう考えたのが可笑しくて、すこし笑ったら、舌を噛まれた。
それすら可笑しく思えた自分は、相当末期だと思った。
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青い春ってやつです。
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