「ジュンコちゃん」

木の上のつれないお姫様はそっぽを向いたまま。
どうしようかな、と藤内は頬をかく。

「君のこと、孫兵がめちゃめちゃ心配してたよ。あれじゃ孫兵の心臓に良くない」

孫兵という言葉に反応したのか、ジュンコが藤内の方を見た。
本当に、困るくらい賢い獣だと思う。
…だったら逃げだすなと言いたくなるけれど。


「孫兵のために、帰ろう?」











幼稚なジェントル











「ジュンコ!」


開口一番にそれかよ。
そういう突っ込みは心の中でしておいて、藤内は極力笑顔を作ろうとした。
この蛇にちょっとだけ嫉妬しそうになった。
苦笑いにしかならなかった。


「木の上にいらっしゃったぞ、ジュンコ姫は」
「すまない、浦風。手伝ってもらって」
「気にするな。わたしが勝手に手伝いたかっただけだから」


そうして藤内は、抱えていた孫兵最愛のペットを手渡した。


「前から思っていたけど…」
「ん?」
「浦風は普通にジュンコに触れるよな」
「…嫌だったか?」


ちょっとだけ不安げに、藤内は尋ねる。
藤内から渡されたジュンコが孫兵の首に巻きつく。
定位置に戻ったことに安心したのか、孫兵はそっと息を吐いてから、笑った。


「…いや、嬉しい」


孫兵はごくたまに、不意打ちで、笑う。
それは少しだけ口角が上がるだけで、世間一般の『笑う』と比べれば、本当にささやかなものでしかないけれど。
張り詰めたような雰囲気をまとう彼を少しだけ、柔らかくみせるもので。


「……っや、やはり男たるもの、女性に対して常に等しく紳士でないとなっ!」


「そういう…ものなのか?」
「そうだっ!やはり女性には優しくしないと!」


そうか、と首を傾げながらも孫兵が頷いたのを見て、藤内は胸を撫で下ろす。
ペット以外の事について、あまり深くまで考えないこの男に、今は少しだけ感謝した。













本当に優しくしてあげたいのは君だとか。

本当は君だから優しくしたいのだとか。

たまに見せる君の微笑がみたいとか、その他諸々と共に。



























どうか、この上ずった声に、君が気がつきませんように。












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藤内が「ジュンコちゃん」とか読んでたら萌えるなぁっと
思っていたら何時の間にか藤孫に…!
もう藤内×ジュンコでもいいんじゃないか(かなり真面目な顔で)

2005/6/5のss日記より再録








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