first cousin











「殺せ」


外れない。
手枷がどうしても外れない。


「…ッ…できるか、そんな事っ…!」
「…殺せって…」
「いやだ…」
「………頼、むから…」


フィンゴンが泣きそうな声で反論すれば、幼子を諭すように優しい、けれど強い口調で言い返される。
話す事すら苦痛なのだとでもいうように、マイズロスは目を伏せた。
そんな従兄弟が痛ましくて、ひたすら悲しくて、悲しくて。


「…助けに、きたんだ」


ぽつり、と想いを吐き出してしまう。

裏切られても、そんな事関係なかった。
幼い頃から優しく微笑んでくれる彼が全てだったから。
マイズロスがモルゴスに捕まったときいて、いてもたってもいれなくて。

助けに、きたのに。


「君を、助けたいのに…ッ!」


あぁまた。
一度は引いた筈の涙が、溢れてきた。
久しぶりに見た従兄弟の体には痛ましい拷問の傷だらけで。
フィンゴンが恐れるものはモルゴスじゃない。

マイズロスを失うことが、何より恐い。

ただ、この優しいひとを助けたい。
また、共に時間を過ごしたい。
それすら叶わないというのだろうか。
それさえ罪だというのだろうか。


「マイズロス」


繋がれている右手首に口づける。
途端、びくり、とマイズロスは身体を震わせた。


「…っ…フィ…」
「今一度我慢を、マイズロス」
「な、に…」


訊きかけたマイズロスの目に映ったのは、年若き従兄弟の腰元から引き抜かれた一振りの剣。
鍛えられた切っ先が己の右手首に向かって振り落とされた途端。

ごきゅ、と。

身体の芯から不快な音が響いて。


「ひ……っッ…ぅ…ッ!!」


マイズロスは細い身体を痛々しい程しならせた。
悲鳴は声にならずに、吐き出された吐息が空気に溶けていく。
悪しき術のかかった手枷からは離れる事が出来たけれど。

どくどくと流れる血が彼らを汚す。

何故って、マイズロスの手首より先はたった今切り落とされて、下に落ちていってしまったから。


「……ごめん、」


でも、許してくれなんて言わないから。

ぐったりとした従兄弟を落ちないように抱き抱えて、フィンゴンが呟く。




死を望んだ君を生かすのは、わたしの業。




たとえ、腕を切り捨てても。


それでも、わたしは君に生きていて欲しい。




















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駄目ですか、こんなフィンゴン。
色んな意味で痛い、フィンゴン。
とことん幸薄い、マイズロス。













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