そばにいるよ











「……どうした?」


 ボロミアはファラミアに尋ねました。

 もう、真夜中といっても差し支えない時間でした。
 そんな時間にボロミアの自室へ訪ねてきたファラミアは、何故か一言も口をききません。
 ドアのところで立ち尽くしたまま、それ以上入ってこようとしないのです。


「…では、元気のないわたくしの可愛い弟殿のために、今宵は我が寝台をお貸しするとしよう!」


 わざと重々しい口調でそういうと、ボロミアは布団を捲りあげ、己の隣りを空けました。


「おいで、ファラミア!」


 そう言えば、ファラミアはおずおずとベットにもぐりこんできました。
 小さな肩がふるえています。
 先程は暗くて気がつかなかったけれど、よくみれば、ファラミアの頬は濡れていました。
 泣いていたのだろうとボロミアは思いました。
 何しろ、今朝、兄弟の母が身罷られたばかりなのですから。


「大丈夫だよ。もう大丈夫。大丈夫だから」


 そうっと。
 小さな身体を抱きしめ、何度もボロミア繰り返しました。


「もうファラミアが大好きなものは何処へもいかないよ」


 ファラミアが息をのみました。

 こんなのは、何の根拠もない言葉です。
 いくら頭があまり良くないと自称するボロミアにだって分かっています。
 けれどこれが、今のボロミアに言える精一杯のことなのです。


「……あにうえ、も………?」


 それは、小さいファラミアにだって分かっていました。
 この言葉は自分を慰めようとしているだけだということ。
(いえ、もしかしたら本気で言ってくれているのかもしれませんが)
 それでも確かめずにはいれなかったのです。

 すると、大好きな兄が笑って言いました。


「いかないよ。そうだよ、勿論だとも!
 こんなに泣き虫で甘えんぼで可愛いファラミアをおいていけるわけがないじゃないか!
 わたくしも、父上も、おまえをおいてはいかないよ!」


 ボロミアの、何度も何度も繰り返し励ましてくれる声は、握り締めてくれるおおきな手は、
 とてもあたたかくて、やさしくて、ファラミアは泣き止むことができませんでした。

 何時の間にか、ファラミアが泣きつかれて眠ってしまっても、ボロミアはずっと傍にいてくれたのでした。




















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ファラミア5歳、ボロミア10歳。
フィンドゥイラスお母様は38歳だったのです(若)
仲良しにも程があるって、執政兄弟。














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